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2025/03/14

ラズパイ5とテレビでラグビーを観るための、Wi-FiとBLEのハイブリッドリモコン【2025/03/16追記・修正】

ネット動画(私の場合はほとんどラグビー)を観るために買ったRaspberry Pi 5(ラズパイ5)の電源スイッチをリモート操作する方法が分かったことに気をよくして、おうちサーバーからラズパイ5+関係AV機器を制御する仕組みを作りました。さらに、動画再生で頻繁に使う一部の機能を補助するデバイスも作りました。
これで様々なコントロールができるようになったものの、webアプリ用スマホとラズパイ5用のマウス、それに補助デバイスの3つが絡んできて、少々煩雑な感じになってしまいました。

やはりここまできたら専用マウスを自分で作った方がいいけれど機構をどうしよう、と思いながら秋月電子さんのサイトを見ていたところ、アルプスさんのジョイスティックをユニバーサル基板に繋ぐキットを売っていることに気が付きました(他にもいくつかありますが、これと目が合った)。そこでwebアプリの操作をWi-Fiで行い、ラズパイ起動後の操作をジョイスティックとスイッチで行うBLEマウス&キーボードを作ろうと思い立ちました。少々の紆余曲折を経てできたものは、こちらです:
Jst01

さて、こんな紆余曲折がありました。
まずはBLE機能だけで「いつもの」Seeed XIAO BLE Sense (nRF52840) を使った回路とレイアウトを考えたところ、ジョイスティックのADC2系統とスイッチ9個でXIAOのI/O数はピッタリで、「いつもの」ミンティアブリーズのケースに収まるメドは立ったのですが、なんだか面白くありません。どうせならWi-Fi経由でのラズパイ5電源&周辺AV機器の操作も1デバイスでやりたいと考えていたところ、Raspberry Pi Pico Wがちょうど合いそうだと思って買って検討してみたところ、MicroPythonではWi-Fiが不安定だったのとBLE HIDが難しそうだったので早々に諦めて、CircuitPythonにスイッチ。まずはWi-Fi動作を確かめてからBLEに移ったのですが、コードが見事に動かない。なんでかなと思ったら、現時点でのCircuitPythonはPico WのBLEをサポートしていないのでした
Jst02
続いてESP32でもCircuitPythonが使えるという情報があって試してみました。素の(Sが付いていない系統の)ESP32はプログラム領域をUSBメモリとして動作させることができないためシリアル経由で操作するのですが、これがどうにも不安定かつ煩雑で、ちょっとやっていられない感じでした。
以上の紆余曲折を経て、今回はESP32-WROOM-32EをArduinoで動かすという古典的な方法にしました。

先日の動画再生補助デバイスを作ったとき昔のコードではコンパイルエラーが出ていたことから、先にライブラリのバージョン等を確認しました。BLEについては3年前に公開されていたマウスとキーボードのコンボライブラリを使うことにしてサンプルプログラムをコンパイルしたところ、Arduinoのesp32ボードライブラリ(by Espressif Systems)のメジャーバージョンが3になるとエラーで弾かれ(現行最新は3.1.3)、バージョン2系最終の2.0.17であれば動きました。そこで、以後の作業は2.0.17を用いることにしました(公式の移行ガイドがあるものの、私の技量では手に余るので)。
すっかりPython慣れしているせいでカッコや変数型などに悩まされながらも、BLEによるジョイスティック周り、同じくBLEによるキー入力周り、Wi-Fi周りとブロックごとに作っていきました。ここで、BLE関連だけでメモリ使用量が85%に達していたのでWi-Fiを合体したらオーバーするのではないかと思っていたところ、案の定130%になってしまいました。どうしようか途方に暮れながら"Sketch too big"というエラーメッセージで検索したところ、同様のトラブルはままあることのようで(一例)、Arduino IDEのToolsにあるPartition SchemeからAPPに割り当てるメモリを初期値1.2MBから最大3MBまで拡張できる仕組みがありました。今回の場合ログなどを蓄積する用途でないためSPIFFSが小さくなるのは問題無く、無事にコンパイル・実行できるようになりました(最終的に2MB割当てて81%)。

ブレッドボードでの作業はここまでとして、回路図を整理し、部品配置をあれこれ考えて、ジョイスティックやスイッチ(キー)を上側の基板に、ESP32と電源系を下側の基板に置いて、ロープロファイルのピンヘッダーピンソケットでスタックすることにしました。これで組むと、ケース内の部品高さはジョイスティック部分で約16mm、他は約15mmになりました:
Jst03
高さが不揃いになるとスイッチのキーが寸足らずになってしまうので、ジョイスティック部分のケースを刳り抜き、これでケース内は約15mmで揃います(今度はジョイスティックが低くなるので厚紙を切ったスペーサーで調える)。前にキッチンタイマーを作ったときに使ったのと同じダイソーで2個110円のばんそうこうケース(ケース内高さ16mm)に入れようと考えていたのですが、その通りにできました。ちなみにケース内寸の短辺は約33mmで、いまは亡きプラケースのフリスク用に作られた基板(例:秋月電子さんスイッチサイエンスさん)がちょうど入ります。

スタックを開いた部品面が次の写真です:
Jst04
上側の基板にスイッチ類が並んでいます。下側の基板にESP32とLiPo充電モジュール、電源系切替ジャンパを置いています。ここで充電モジュールはTP4056Aを使ったもの(Aと無印はほとんど同じ)で、2000mAh級の18650バッテリーを充電するために1A給電するように設計されているのですが、使おうとしているバッテリーは160mAhなので充電電流を1C=160mA以下にしなくてはいけません。そこで電流制御抵抗を1.2kΩから10kΩに付けかえました。仕様書の上では130mAになる設定ですが、実測値は120mAでした。


次の写真は配線面。下側の基板にシリパラ変換器とレギュレータを入れました:
Jst05
ここではLiPoバッテリーに配線やバリが直接触れて傷やショートを招かないようにマスキングテープを貼っています。また、シリパラ変換器のVBUS(5V)ラインに付いている300mA程度のポリスイッチがESP32の突入電流で動作してしまい自動リセットを繰り返すのでバイパスしました(回路側のショートに注意)。

マスキングテープを剥がすと配線です:
Jst06
LiPoバッテリーの高さマージンがあまりないので(ロープロファイルのヘッダ&ソケットで6.14mm、バッテリーの厚さが4.0mm)、電池の入るところをできるだけ避けています。

さぁできた、というところでラベルも作って組み上げて試運転を始めました:
Jst07
すると、ブレッドボードの時と違ってBLEがとても不安定でした。色々と確認したところ、縦持ちの設計で写真の左側を手で持って操作するときにBLEが切れ切れになることが分かりました。実はこちら側にESP32のアンテナが入っているので、手で電波の放射が妨げられるという初歩的なミス。Wi-FiでRSSIを見ると、手で持つことで15dBぐらい落ちていました。それでもWi-Fiは繋がっていたのですが、BLEの方が弱いようです。元々Pico Wで同じケースに収める検討をしていた時にはアンテナが中央付近に来るのでちょうど良かったのですが、ESP32に路線変更したときに見落としていました。

これは作り直しかと思っていたところで横向きに持てば大丈夫だと分かり、スイッチの機能割り当てとラベルを見直しました。さらにベータテストで機能の見直しなどをして、最終的にできたものが冒頭の写真です(再掲):
Jst01
回路図はこうなりました:
Joysticktermsch

さて、ESP32-WROOM-32Eで気になる消費電流を測りました。以前XIAO BLEの消費電流を測るために作ったハイサイドI/Vコンバータは約50mAまでしか測れず、あっさりとクリップしてしまいます。そこで1Ωセンス抵抗と並列に0.1Ωを入れて、測定倍率を(1.0*0.1)/(1.0+0.1) = 1/11 (~0.091) としてみました。
【2025/03/16 次の一節を修正しました】
この状態で消費電流を測った結果がこちらです:
Jst08a
ブート時に44mA、
無線なしでのADCを含む定常動作が33mA、
Wi-Fi起動時にピークで210mA、
Wi-Fiのスキャンで88mA流れます。
Wi-Fiを切っても6mAぐらい増えた39mAが定常的に流れ、
Wi-Fi接続するとピークで210mA・ビーコン時に88mA・ボトムが39mAを推移します。
ここにBLEが重なるとアドバタイズ時に110mA流れ、Wi-FiとBLE両接続ではビーコン時に88mA・ボトムが39mAを推移します。 今回、Wi-Fiのタイムアウトを1分、BLEのタイムアウトを2分として、BLEがタイムアウトしたらソフトリセットを掛けるようにしているので、実質的なアイドリング電流は39mA強。バッテリーが160mAhなので4時間しかもたない計算です。これは、スリープを入れることを検討する方が良さそうです。
【修正はここまで】

コードはGitHubにリポジトリを作って置いておきました。
BOMは次の通りで、合計2547円でした。なお、電線・ハンダ・ロープロファイル以外のピン・ラベル等の副材はカウントしていません:
itemdetailpricepcssubtotal
MPUESP32-WROOM-32E3601360
JoystickAE-RKJXY10000066001600
S/PCH340E module60.8160.8
ChargerTP4056A module25.4125.4
R10k 0.1% 160820120
Reg.NJM2845DL1-3350150
Sub.ESP32 to Frisk3461346
Sub.universal for Frisk1202240
Sub.D-type Non-th40140
LiPo401430 160mAh230.41230.4
casefor adhesive plaster55155
Pin socketlow profile 1x20802160
Pin headerlow profile 1x4040140
SWDTS-63 and so on1012120
SWTS8855SG-P222122
SWTVBP0620120
SWSS-12D00-G520120
C10uF60160
C1uF13452
LEDOSG8HA3Z74A Green10110
LEDOSR5JA3Z74A Red10110
R1/6W 3x100k, 2x10k155

まとめたことで課題が出て良かったと思っています。改善検討をぼちぼちやりつつ、後半に入ったラグビーシーズンを楽しもうと思います。

以上、何かの参考になれば幸いです。

パドラッパ from MacBook Air (2017 → M2, 2022)

【2025/03/16追記・修正】
初出時の電流測定で校正を誤っており、約10%大きい値となっていたことに気が付いたので再測定し、記事中のグラフおよび値を修正しました。
修正前の内容を記録のため残しておきます:
この状態で消費電流を測った結果がこちらです:
Jst08
ブート時に44mA、
無線なしでのADCを含む定常動作が33mA、
Wi-Fi起動時にピークで230mA、
Wi-Fiのスキャンで99mA流れます。
Wi-Fiを切っても10mAぐらい増えた44mAが定常的に流れ、
Wi-Fi接続するとピークで230mA・ビーコン時に102mA・ボトムが44mAを推移し、
切れる前に200mAぐらい瞬間的に流れます。
BLEはアドバタイズ時に110mA程度流れ、
接続するとピークで120mA・ビーコン時に100mA・ボトムは44mAを推移します(Wi-Fiより若干少ない程度)。
あと、Wi-Fi接続中にBLEアドバタイズすると120mA流れます。
今回、Wi-Fiのタイムアウトを1分、BLEのタイムアウトを2分として、BLEがタイムアウトしたらソフトリセットを掛けるようにしているので、実質的なアイドリング電流は44mA程度。バッテリーが160mAhなので4時間はもたない感じです。これは、スリープを入れることを検討する方が良さそうです。
【ここまで修正前】

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