電流測定用にハイサイドI/Vコンバータを作ってみました【2025/02/08追記・2025/04/22補足】
無線センサなどを作っていると、設計や動作条件が変わるごとに電流がどう変化するのかを定量的に観測したくなることがあります。あまり変化が無いところなら適当な抵抗を電源ラインに挟んで、必要に応じてデカップリングコンデンサを入れつつ、抵抗両端の電圧差をテスターで読み取ればいいのですが、変化が大きい場合はオシロで波形観測したいです。しかし貧乏人 趣味人の自作オシロを前提にすれば、チャネル差分波形を取るには解像度が足りず、フローティング測定に対応するのも難しそう。…などと考えていたところ、秋月電子さんにハイサイド電流センシングモジュールキットがあるのを見て、これは大電流用のようですが、オペアンプで作れそうだと思い、やってみました。
コンセプトとしては、電源ラインにセンス抵抗を入れ、この両端電圧を差動増幅するものです。ここで小電流動作しているDUT側へ影響を与えにくいよう、入力インピーダンスの高い状態で受けたい。そのためにオペアンプのボルテージフォロワでバッファしてから差動増幅することにしました。オペアンプには単一電源でrail to rail(フルスイング)動作できるNJM2732が手元にあったので、これを使いました。
レイアウトを考える前にバラックで確認したところ、手持ちだった最小抵抗値10Ωではドロップが大きすぎるのか無線センサの動作に影響が出てNG。数Ω以下なら大丈夫そうだったので、ちょっとお高い1Ω 1%の金属皮膜抵抗を買いました。増幅率は、測りたいのが数10mAまでなので、1Ω * 50mA = 0.05Vがフルスケールになるように100倍にします。また、外部電源無しにしたくてボタン電池から5VのDDコンで動作させたところスプリアスが派手に出たことと、これでは5Vラインの測定ができないことから、内部電源は諦めて手持ちのACアダプタ15Vから可変電圧レギュレータLM317で6Vを作ることにしました(ここで6VはNJM2732の最大動作電圧)。レギュレータを使うことで電源スプリアスは抑えられる筈です。 途中、LM317のピン配を間違えたりしつつ出来上がったものは冒頭の写真で、その回路図はこちらです:

電源電圧に余裕が出たことから増幅率を大きめにしておいて、出力を多回転ボリュームで絞って校正できるようにしてみました。また、セルフで校正できる仕掛けも組み込みました。 実際に使っているところの写真です:

左がデジタル可変電源、右上のバラックがDUTの無線センサ、右中が今回のI/Vコンバータ、右下がUSBオシロです。 オシロでは、このように電流推移がモニタできます:

(無線センサの電源投入時の様子)
また、レギュレータを使った恩恵でスプリアスもほとんど乗ってこず、気持ちよく使えています(オフセットはちょっと気になります):

なお、電流の実効値を知りたい時はテスタで出力電圧を測って100で割ればいいのですが、電流波形に乗っているパルスの影響でチラチラしてしまうので、適当なローパスフィルタをテスタ入力側に入れます。今回の場合、単に47μFの電解コンを入れるだけで値は落ち着きました。その時のオシロ波形は次の通りです:
BOMは次の通りで、合計786.2円でした。なお、電線・ハンダ・ピン・ラベル等の副材はカウントしていません:
さて、この系を使ってセンサ端末の電池寿命が想定以上に良くなった問題を検討しています。電池交換後117日の7/25時点で電池残量は61%(1.25V)で、改造前後の電池もち比率が316倍にもなっています。
一方、ブレッドボード上に再現したサンプルによる改造前後のアイドリング時電池端電流は16mAから0.75mAの21倍で、倍率で見ると全く計算が合いません。
使っている電池が1900mAhなので、改造前の16mAならスッカラカンになるまで 1900/(16*24)=4.9 で5日ありませんから、3日しか持たなかったのもオーダーは合います。しかし改造後の0.75mAだと 1900/(0.75*24)=105.6 で既に切れているはずなのに、まだまだ持っていますから、小電流がちゃんと測れていないのか(オシロで見えたオフセットを加味しても150日)、他の要因があるのか、まだ理由が分かっていません。 以上、何かの参考になれば幸いです。 パドラッパ from MacBook Air (2017) 【2025/02/08追記・2025/04/22補足】
Seeed Studio XIAO nRF52840 SenseをNiMH電池で動かすシリーズが不定期連載のようになってしまって前後関係が分かりにくいことにアクセス履歴を見て気が付きました。次のような構成になっていますので、適宜ご参照下さい:
1. 「Seeed XIAO nRF52840をNiMH電池で動かす一方法(の中間報告)」
…回路設計上のポイントはこちらにまとまっています
2. 「Seeed XIAO nRF52840をNiMH電池で動かす一方法(中間報告2)」
…報告1の段階で考えていたより電池もちが良さそうに見えて(いまから思えば)見当違いのことを考えていた記録
3. 「電流測定用にハイサイドI/Vコンバータを作ってみました」(←この記事)
…電池もちについて検討するための治具を作った話
4. 「電流測定用ハイサイドI/Vコンバータとセンサ端末の検証(続き)」
…治具のレンジ拡大と精度確認を踏まえた電池もちの検討(「公称電圧」をアテにしてはいけないという学び)
5. 「Seeed XIAO nRF52840をNiMH電池で動かす一方法(完結編)」
…ようやく半年かかって電池切れになった、という結果を踏まえた整理
6. 「Seeed XIAO nRF52840をNiMH電池で動かす一方法(その後)」
…その後、電池が切れるたびに情報追加しています。現時点で3回2025/04/22現在で4回、ちょうど半年もっています

レイアウトを考える前にバラックで確認したところ、手持ちだった最小抵抗値10Ωではドロップが大きすぎるのか無線センサの動作に影響が出てNG。数Ω以下なら大丈夫そうだったので、ちょっとお高い1Ω 1%の金属皮膜抵抗を買いました。増幅率は、測りたいのが数10mAまでなので、1Ω * 50mA = 0.05Vがフルスケールになるように100倍にします。また、外部電源無しにしたくてボタン電池から5VのDDコンで動作させたところスプリアスが派手に出たことと、これでは5Vラインの測定ができないことから、内部電源は諦めて手持ちのACアダプタ15Vから可変電圧レギュレータLM317で6Vを作ることにしました(ここで6VはNJM2732の最大動作電圧)。レギュレータを使うことで電源スプリアスは抑えられる筈です。 途中、LM317のピン配を間違えたりしつつ出来上がったものは冒頭の写真で、その回路図はこちらです:

電源電圧に余裕が出たことから増幅率を大きめにしておいて、出力を多回転ボリュームで絞って校正できるようにしてみました。また、セルフで校正できる仕掛けも組み込みました。 実際に使っているところの写真です:

左がデジタル可変電源、右上のバラックがDUTの無線センサ、右中が今回のI/Vコンバータ、右下がUSBオシロです。 オシロでは、このように電流推移がモニタできます:

(無線センサの電源投入時の様子)
また、レギュレータを使った恩恵でスプリアスもほとんど乗ってこず、気持ちよく使えています(オフセットはちょっと気になります):

なお、電流の実効値を知りたい時はテスタで出力電圧を測って100で割ればいいのですが、電流波形に乗っているパルスの影響でチラチラしてしまうので、適当なローパスフィルタをテスタ入力側に入れます。今回の場合、単に47μFの電解コンを入れるだけで値は落ち着きました。その時のオシロ波形は次の通りです:

item | detail | price | pcs | subtotal |
---|---|---|---|---|
OPAMP | NJM2732D | 100 | 2 | 200 |
Reg. | LM317 | 150 | 1 | 150 |
Diode | 1N4001 | 5 | 1 | 5 |
LED | 3mm RED | 10 | 1 | 10 |
subs | D-type BB | 40 | 1 | 40 |
C | 10uF | 50 | 3 | 150 |
R 1% | 1 | 4.2 | 1 | 4.2 |
R 5% | 120-2, 330-1, 1.2k-2, 10k-3, 100k-2, 1M-2 | 1 | 12 | 12 |
VR | 10k | 40 | 1 | 40 |
term | 2pin | 35 | 1 | 35 |
IC socket | 8pin | 10 | 2 | 20 |
SW | SPDT | 100 | 1 | 100 |
SW | SPST | 20 | 1 | 20 |
一方、ブレッドボード上に再現したサンプルによる改造前後のアイドリング時電池端電流は16mAから0.75mAの21倍で、倍率で見ると全く計算が合いません。
使っている電池が1900mAhなので、改造前の16mAならスッカラカンになるまで 1900/(16*24)=4.9 で5日ありませんから、3日しか持たなかったのもオーダーは合います。しかし改造後の0.75mAだと 1900/(0.75*24)=105.6 で既に切れているはずなのに、まだまだ持っていますから、小電流がちゃんと測れていないのか(オシロで見えたオフセットを加味しても150日)、他の要因があるのか、まだ理由が分かっていません。 以上、何かの参考になれば幸いです。 パドラッパ from MacBook Air (2017) 【2025/02/08追記・2025/04/22補足】
Seeed Studio XIAO nRF52840 SenseをNiMH電池で動かすシリーズが不定期連載のようになってしまって前後関係が分かりにくいことにアクセス履歴を見て気が付きました。次のような構成になっていますので、適宜ご参照下さい:
1. 「Seeed XIAO nRF52840をNiMH電池で動かす一方法(の中間報告)」
…回路設計上のポイントはこちらにまとまっています
2. 「Seeed XIAO nRF52840をNiMH電池で動かす一方法(中間報告2)」
…報告1の段階で考えていたより電池もちが良さそうに見えて(いまから思えば)見当違いのことを考えていた記録
3. 「電流測定用にハイサイドI/Vコンバータを作ってみました」(←この記事)
…電池もちについて検討するための治具を作った話
4. 「電流測定用ハイサイドI/Vコンバータとセンサ端末の検証(続き)」
…治具のレンジ拡大と精度確認を踏まえた電池もちの検討(「公称電圧」をアテにしてはいけないという学び)
5. 「Seeed XIAO nRF52840をNiMH電池で動かす一方法(完結編)」
…ようやく半年かかって電池切れになった、という結果を踏まえた整理
6. 「Seeed XIAO nRF52840をNiMH電池で動かす一方法(その後)」
…その後、電池が切れるたびに情報追加しています。
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