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2022年12月

2022/12/31

2022年 面白かった本

今年も「読了。」と呟いた本をまとめてみました。いま思い返しても面白かった(読んでよかったと思える)本ばかりです。

先に特筆したい本を挙げると(読んだ順、リンク先は版元):
2021best
関なおみ著『保健所の「コロナ戦記」TOKYO2020-2021』…ふだんは食中毒などでしか見かけないのにコロナ禍で良くも悪くも注目された保健所で実際に起こっていること。平時を前提とした組織の緊急対応がいかに困難であるか、身につまされる。
髙橋博史著「破綻の戦略:私のアフガニスタン現代史」…昨年夏のアメリカ撤退と同時にタリバンが復権したアフガニスタンがどういうところなのかを、現地に深くコミットしてきた方が率直に書かれたもの。ジャーナリストや研究者とは一味違う書きぶりが面白い。
小坂康之,林公代共著「さばの缶づめ、宇宙へいく」…福井の高校生が宇宙サバ缶を作ったというニュースの中身を追っていくと、テクニカルな課題解決どころか社会問題への取り組みが前面に出てきて感動的でした。
アラーアルジャリールwithダイアナダーク著,大塚敦子訳「シリアで猫を救う」…内戦下での市民の生活と地べたの目線そしてSNSでの繋がりが、戦争被害にあったネコのサンクチュアリに結びつくという思いもよらない展開に目が離せない。読了後、彼らのtwitterは追っています。
鈴木エイト著「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」…参院選終盤における安倍元首相暗殺事件を契機に掘り起こされた旧統一教会問題を、地道に追ってきたドキュメンタリー。私の学生時代にも原理研は細々とありましたが、その後こんなにも権力に庇護されて蔓延っていたことに驚きました。
井上正幸著「これまでになかった ラグビー戦術の教科書」…2019年W杯やリーグワンで数十年ぶりにじっくり観ているラグビーが1980年代とは様変わりしていることを感じつつ専門的な見方が分からなかったところ、本書で整理されて、いっそう観戦が面白くなりました。
諸橋憲一郎著『オスとは何で、メスとは何か? 「性スペクトラム」という最前線』…世の中的にはLGBTQ+の話題を巡る論争があり、個人的にも還暦を迎えて体質の変化が顕著になってきたところ、本書に示されている最新の生物学的観点は様々に腑に落ちるところがあって面白かったです。
中田考著「宗教地政学から読み解くロシア原論」…2月からロシアがウクライナへ侵攻していることについて、軍事的・人道的・経済的な言説、あるいはナショナリズムや為政者の耄碌など様々な言説が飛び交っているものの、何がどうなってこういう状況になっているのかが掴みきれずにいる。そこに対して、東西キリスト教会分裂から1000年のカトリックと正教の活断層という補助線を入れることで見えやすくなるものがありました。
ほかにも挙げだすとキリが無いので、とりあえずこの辺りで…

なお香月美夜著「本好きの下剋上」シリーズは別格です。今年は本編3冊、短編集1冊、ふぁんぶっく1冊、コミックス5冊の計10冊を発売日に読みました。4月からのアニメ第3期も面白かったですし、「このライトノベルがすごい!2023」(宝島社刊)単行本・ノベルズ部門第1位!殿堂入り!(2022.11.26のお知らせ)もめでたい限りです。本編は、いよいよ来年末に結末を迎えます。web連載から大いに加筆されるということで、とても楽しみです。

以下が全リストです(読んだ順、リンク先は感想ツイート):
マーサ・ウェルズ著,中原尚哉訳「マーダーボット・ダイアリー 上下
斎藤幸平著『人新世の「資本論」
マーサ・ウェルズ著,中原尚哉訳「ネットワーク・エフェクト
髙木佐保著「知りたい!ネコごころ
広瀬友紀著「ちいさい言語学者の冒険 - 子どもに学ぶことばの秘密
関なおみ著『保健所の「コロナ戦記」TOKYO2020-2021
医学通信社刊「月刊保険診療2022年1月号 特集/730日の“失敗”のメカニズム
岸見一郎著「アドラー心理学入門
ジョージ・オーウェル著,田内志文訳,内田樹解説「1984
谷口真由美著「おっさんの掟
今村翔吾著「塞王の楯
佐藤俊哉著,佐藤恵子絵「宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ
平畑光一著「新型コロナ後遺症 完全対策マニュアル
鴨長明著,蜂飼耳訳注「方丈記
小泉悠著「現代ロシアの軍事戦略
香月美夜著「本好きの下剋上 短編集2
高野文子・山田尚子共著『わたしたちが描いたアニメーション「平家物語」
川端康成著「伊豆の踊子
小梅けいと著「戦争は女の顔をしていない3
マイクル・クライトン著,浅倉久志訳「アンドロメダ病原体〔新装版〕
片岡義男著「西テキサスの小さな町
CONTINUE MOTION GRAPHIC Vol.76「平家物語 特集号
髙橋博史著「破綻の戦略:私のアフガニスタン現代史
香月美夜著「本好きの下剋上 5-8
鈴華著『【マンガ】本好きの下剋上 第二部 「本のためなら巫女になる!7」
福田ますみ著「暗殺国家ロシア―消されたジャーナリストを追う―
飯塚恵子著「ドキュメント誘導工作 情報操作の巧妙な罠
安斎育郎著「だます心 だまされる心
小坂康之,林公代共著「さばの缶づめ、宇宙へいく
川原泉x福田素子「デジタル原始人☆川原泉
勝木光著「【マンガ】本好きの下剋上 第四部 貴族院の図書館を救いたい!4
ブラウニング著,谷喬夫訳「増補 普通の人びと──ホロコーストと第101警察予備大隊
うおやま著「ヤンキー君と白杖ガール8(最終巻)
黒井文太郎著「プーチンの正体
小川さやか著『「その日暮らし」の人類学~もう一つの資本主義経済~
山本芳久著「NHK100分de名著 アリストテレス『ニコマコス倫理学』
小泉悠「ロシア点描
岡部芳彦著「本当のウクライナ
武田友宏編「太平記 ビギナーズ・クラシックス
千々和泰明著「戦争はいかに終結したか
安田登編「100分de名著『太平記』
香月美夜著「本好きの下剋上 5-9
さわむらリョウ著「しゃしゃごもり 1
中条省平編「100分de名著 アルベール・カミュ『ペスト』
アラーアルジャリールwithダイアナダーク著,大塚敦子訳「シリアで猫を救う
山﨑圭一著「一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書
サン=テグジュペリ著,鈴木雅生訳「戦う操縦士
鈴木一人,小泉悠,鶴岡路人,森聡,川島真,宇山智彦,池内恵共著「ウクライナ戦争と世界のゆくえ
岩船晶著,戸部淑絵「ポーション、わが身を助ける8
鈴木エイト著「自民党の統一教会汚染 追跡3000日
菊池真理子著『「神様」のいる家で育ちました〜宗教2世な私たち〜
片岡義男著「豆大福と珈琲
由唯著「虫かぶり姫
郡司芽久著「キリンのひづめ、ヒトの指 比べてわかる生き物の進化
武田砂鉄編「100分de名著 ル・ボン『群衆心理』
井上正幸著「これまでになかった ラグビー戦術の教科書
香月美夜著「本好きの下剋上ふぁんぶっく7
勝木光著「【マンガ】本好きの下剋上 第四部 貴族院の図書館を救いたい!5
諸橋憲一郎著『オスとは何で、メスとは何か? 「性スペクトラム」という最前線
尾松亮著「廃炉とは何か もう一つの核廃絶に向けて
斎藤環編「100分de名著 中井久夫スペシャル
鈴華著「【マンガ】本好きの下剋上 第二部 本のためなら巫女になる!8
香月美夜著「本好きの下剋上 5-10
福田充著「リスクコミュニケーション
今井宏平著「トルコ現代史 オスマン帝国崩壊からエルドアンの時代まで
中田考著「宗教地政学から読み解くロシア原論
以上66冊です。去年組んだBeautiful Soupのスクリプトを使って、一瞬でリストアップできました。

ふと気付くと、今年はハヤカワ率がとても低かった(1冊!?)。どうにも収まらないコロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻、安倍元首相暗殺〜統一教会問題など、現実が仮想を超える事象が多かったせいかも知れません。
実際に読んだのは上記+12冊ぐらいで、今年もぜんぶ読み切りました。来年もいい本と出会えますように。

それでは皆様、よいお年をお迎えください。

パドラッパ from MacBook Air (2017)

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2022/12/14

TinkerBoard 2S用の公式ケースを買って、ちょっと改造【2023/03/08追記】

2021年3月に買って、動作はサクサクだけれどヒートシンクが巨大で既存ケースに入らず使いにくいなどとレポートしていたTinkerBoard 2SをLinuxの勉強用などに時々使っていたのですが、さすがに裸族のままだと埃っぽくなって申し訳なくなり、適当なケースが無いものかと検索したら、知らない間に公式のケースが出ていました。これを買って、ちょっと改造して使い始めたのをレポートします。
Tb2sc01
販売ページはこちら:
ASUS Tinker 2 Fanless Case | Physical Computing Lab
…画像ファイル名から2022年5月末に発売されたようで、約半年もスルーしていたようです。

いくつかの販売サイトを見たのですが、ASUS公式だと思われる外観写真しか無くてよく分からないなと思っていたところ、タイのFA屋さんであるIBCONが開封の儀を動画で上げてくれていました(こちらは2022年4月):

これによると、
・上側のケースが半分ぐらいヒートシンクになっています。これは強力そう。この部分とCPUを金属ブロックで挟むようです。
・下側のケースにシリコーン(サーマルパッド?)が付くようです。どうやって位置決めして何を放熱するのか、動画ではよく分かりません。

また、ケースに組み込むなら電源スイッチは付けたいところ。上面に付けると積んだときに邪魔なので、側面に付けたいなと思って寸法を見積もったところ、 たまたま手持ちのLED付きスイッチが付けられそうで、到着したら検討することにしました。

私が見つけた2022年12月8日時点では「在庫切れ、次回の入荷は10月上旬予定、予約可能」となっていて、いつ入手できるか不安だったのですが、1週間待たず13日に送られてきました。小さい箱なのに、持ち重りします。これまでケースというと3ple Deckerなどのプラスチックケースしか知らなかったので、少し驚きました。

さて、開けてみましょう。上記の動画などから分かるところはそのままでした。
下側のケースに貼る「シリコーン」はゲル状で冷たく感じるサーマルパッドで、RAMとeMMCに接するようにガイドがついていました:
Tb2sc02
これは有効そうですが、Sなしの2だとeMMCが無くてランドが剥き出しになっているので、絶縁が心配です。
TinkerBoard 2Sのボードと標準添付のヒートシンクおよびケース付属の金属ブロックを一緒に見ると、このようなスケール感です:
Tb2sc03
このケースの放熱が、標準添付のヒートシンクよりも強力そうで期待できます。また、金属ブロックは他の部品とのクリアランスを確保することと、サーマルパッドを介してCPUに密着させるように考えられているのだと思われます。

使おうと考えている電源スイッチは、ちょうど放熱板になっていない「くりぬき」部分に入る大きさでした。
Tb2sc04
ごつい部分へ穴を開けることになったら大変だと思っていたのですが、幸い厚さ1mmのアルミ製サイドパネルにドリルとハンドリーマーでφ16mmの穴を開けるだけで済みました(真空管アンプを作るため45年前に買った道具です)。なお、LEDの電源は電源スイッチ用ジャンパーの隣にあるファン用ヘッダーの5Vが使えました(GPIOを占有しないで済みました)。

組み立てて動作しているところは冒頭の写真。電源スイッチの下に空いている3連の小さい穴からTinkerBoard2/2Sの動作インジケーターが見えるようになっているのがいいなと思いました。
Tb2sc05
ちなみに左からプログラマブル、アクセス、電源です。
最終的に、重さは295gでした。

放熱具合を見るためにYouTubeのフルHD連続再生をしてみたところ、ケースが全体にほんのり暖かくなる程度です。標準添付のヒートシンクでも私の使い方では熱くなることは無かったのですが、ケースに入れてもファンレスで熱的に安心できるのはポイント高いです。送料込みで5588円は少し高いかなと思ってましたが、いかにも数が出ない金属加工品としては満足の逸品です。

以上、何かの参考になれば幸いです。

パドラッパ from MacBook Air (2017)

【2023/03/08追記】
電源スイッチの配線をボード上のどこから取ればいいのかというご質問を頂きました。確かに書き漏らしていました。
TinkerBoard 2/2SのQuick Start GuideにあるTop View配置図の「Power on」がスイッチ接続端子です。
Tb2sc06
実際に接続しているところのアップ写真も掲載しておきます。灰色の2線がスイッチで、赤黒がLEDの電源です。
Tb2sc07
以上、ご参考まで

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